群馬県西毛(せいもう、さいもう)エリアの自然(深津紘二朗)

群馬県甘楽郡甘楽町福島の笹の森稲荷。7世紀初めの前方後円墳跡でもあります。神社は9世紀の建立です。歴史の町甘楽でも、特に由緒ある地として昔からあがめられてきたといいます。

境内の広さは約2.6ヘクタール。高さ約10メートルの古墳に沿ったゆるやかな丘陵地です。頂上に本殿、その裏側に鎮守の森が広がっています。「神社が出来たころからあるのでは」という杉、ヒノキが数十本。それらを取り巻くように、新しく植栽された木々も多く見られます。雑草はきれいに刈られ、歩きやすいです。毎年夏、氏子らが草刈りをし、枝ぶりを整えるといいます。

地域の守り神としての地位は、今も続いているようです。先日、中を歩いた。子供たちが歓声をあげながら走り回っていました。鬼ごっこでもしていたのでしょうか。歓声の残響が森の静けさを増していました。

笹の森から県道を南下、小幡地区に入ると、道路西側に、両岸がきちんと石積みされた小川が見られます。17世紀中ごろ、当時の領主織田家が作った用水路「雄川堰(おかわぜき)」です。信長につながる織田家の善政がうかがわれます。雄川堰は鏑川(かぶらがわ)の支流雄川から分水したものです。戦後、生活用水が入り、汚れた時期もあったが、住民と町が排水設備を整える努力を重ね、元のきれいな用水を取り戻しました。1985年には環境庁から「日本の名水100選」にも選ばれたほどで、現在も農業用水として使われています。

堰は全長20キロに及びますが、県道沿い600メートルには桜並木もあります。町の木ソメイヨシノが約60本植えられており、甘楽の町並みに彩りを添えています。こんな風情を、作家の池波正太郎さんは作品の中で「小幡は江戸時代の名残をとどめていて、誠に趣のあるところ」と書いています。

笹の森は上信電鉄上州福島駅下車、歩いて5分。桜並木まではさらに1.5キロほど南に行くと道路沿いにあります。